ご注意!
・この診療は、検査から治療まですべて健康保険が適用されないため完全に自費診療です。
・自費外来の診療時間は、月:14:00~17:00、火・金・土:14:00~15:00です。
私たちの腸には、数百種類以上、総数にして100兆個を超える腸内細菌が生息しています。これらを総称して「腸内フローラ」、「腸内細菌叢」、または「マイクロバイオーム」と呼びます。腸内細菌は単に消化を助ける存在にとどまらず、免疫系の調整、ビタミンや短鎖脂肪酸などの代謝産物の生成、さらには脳との密接な情報伝達にまで関与していることが近年明らかになっています。
しかし、現代社会の食生活やストレス、抗生物質の使用、睡眠不足などによって、腸内環境は容易に乱れてしまいます。その結果として、慢性的な便通異常やお腹の張りだけでなく、過敏性腸症候群(IBS)、小腸内細菌異常増殖症(SIBO)、アレルギー、自己免疫疾患、認知症、うつ症状など、さまざまな不調につながる可能性が指摘されています。
当院では、これまでも「過敏性腸症候群外来」「SIBO外来」「がん治療中の腸内環境外来」を設け、症状を抱える方への診療を行ってまいりました。その一方で、「特に症状はないが、健康維持や予防のために腸内環境を調べたい」、「よりよい生活習慣を築くために、自分の腸内フローラを知りたい」、「病気にならないよう免疫力を高めたい」、「内側から肌をきれいにしたい」という方も増えてきています。 そこで、疾患や症状の有無を問わず幅広い方を対象に、腸内環境を包括的に評価し、改善をサポートするための「腸内環境外来」を設けています。腸に関する不調を抱える方はもちろん、健康意識の高い方にもご利用いただける外来です。
腸内環境と健康の関係
消化器症状と腸内環境
腸内環境の乱れは、まず便通異常として現れることが多いです。便秘や下痢、またはその両方を繰り返すタイプの不調は典型例です。当院でも「過敏性腸症候群」のページで詳しく解説していますが、腸内細菌叢のアンバランス(ディスバイオシス)はIBSの症状悪化に深く関わっていると考えられます。
また、SIBOは小腸に細菌が過剰に繁殖することでガスや腹部膨満感を生じる病態であり、これも腸内環境の異常の一形態です。当院ではすでに「SIBO外来」を設け、呼気検査やハーブ治療を行っていますが、背景にある腸内環境の総合的な評価が今後の治療成否に大きく影響します。
全身疾患との関連
腸内環境の研究は、もはや消化器疾患にとどまりません。
- アレルギー・自己免疫疾患:腸内細菌の多様性の低下が関与。
- 肥満・糖尿病:特定の細菌比率がエネルギー代謝に影響。
- 精神疾患:腸と脳をつなぐ「腸脳相関」により、不安やうつに影響。
- がん治療:免疫チェックポイント阻害薬の効果にも腸内細菌が影響。
- 皮膚・肌:腸内細菌が乱れていると肌荒れや赤みの原因に。
当院が「がん治療中の腸内環境外来」を設置したのも、こうした最新知見に基づいています。
健康維持・予防という観点からの腸内環境
腸内環境の改善は、過敏性腸症候群(IBS)や小腸内細菌異常増殖症(SIBO)といった症状を和らげるためだけではありません。近年は「腸活」への関心が高まり、特に大きな不調がなくても、健康の維持や将来の予防、美容のために腸内フローラを整えたいと考える方が増えています。
腸内細菌は、食事やサプリメントから摂取した栄養素の消化・吸収効率に密接に関わっています。腸内環境が乱れていると、せっかく摂った栄養素が十分に吸収されず、効果を実感しにくいこともあります。逆に、腸内フローラのバランスが整っていれば、ビタミンやミネラルなどの栄養素をしっかり取り込むことができ、日常的にサプリメントを摂っている方にとっても大きなメリットがあります。さらにいえば、栄養素だけでなく、腸内環境は薬や漢方薬の効きにも影響することがわかっています。
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さらに、腸内環境を整えることは「美腸」や美容にもつながります。腸内フローラが健やかであれば、栄養がスムーズに吸収されることで肌のターンオーバーが促され、透明感のある肌づくりや髪・爪の健康維持にも寄与すると考えられています。エイジングケアや美肌を目指す方にとっても、腸内環境の改善は基礎から整える重要なステップです。
このように「腸内環境外来」は、IBSやSIBOといった症状を抱える方はもちろん、「予防医療」「健康寿命の延伸」「美容と健康の両立」を目指す健康意識の高い方にもおすすめできる外来です。
4種類の検査から選べます
GI-MAP
GI-MAP便総合検査について
胃・大腸カメラ、各種血液検査を受けても問題がないのに体調がすぐれない(特にお腹に症状がある)方は、腸内で病原体や細菌、ウイルス、寄生虫などが悪さをしているかもしれません。あるいは、細菌叢のバランスが崩れ、悪玉菌が過剰に増殖して、炎症を起こしていたり、水素、メタン、硫化水素が過剰に増えていてガス溜まりや胃酸が逆流しているかもしれません。
GI-MAP(Gastrointestinal Microbial Assay Plus)検査は、精度がきわめて高い定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)技術を用いて、少量の便から腸内細菌叢のDNAを測定する検査です。通常のPCR検査に比べ、便1グラムあたり0.1個の細胞さえも検出できる感度の高い検査です。
この検査では、病原体、ピロリ菌、常在細菌、日和見細菌、過剰増殖細菌、菌類/酵母、ウイルス、寄生虫などの有無とその量がわかるだけでなく、消化、免疫反応、炎症のマーカーを調べることができます。
細菌やウイルスに感染すると、マスト細胞が活性化されヒスタミンが放出されます。そして、このヒスタミンが免疫系を刺激することにより過敏性腸症候群を発症することがあります(感染後過敏性腸症候群:PI-IBS)。米国のデータですが、このPI-IBSは、食中毒を起こした人の9人に1人が発症するとの報告があります。さらに、下痢型の過敏性腸症候群では、6割近くが食中毒によるものといわれています。
これに関連して、特定の食物が腸内にあるときにある有害微生物に感染すると、その後その食物を摂取するとマスト細胞が活性化され、過敏性腸症候群を発症することもあります。
また、過去に感染した病原菌や微生物が完全には排除されておらず、体内に残っている一部が悪さをして腹部症状や全身症状を引き起こしている場合もあります。
GI-MAP検査で特に注目すべきは、8種類の遺伝子のピロリ菌を高感度に検出できるという点です。通常の検査では見逃される場合でも、GI-MAPでは検出されることも多いです。
ピロリ菌は胃酸の分泌を阻害することで知られています。このため、[ピロリ菌感染]⇒[胃酸低下]⇒[除菌力低下]⇒[有害菌が多いまま食物が小腸に]⇒[小腸で細菌が増殖]⇒[SIBO]ということが起こり得ます。

特に、PCR検査でも、この検査は「qPCR」技術を用いていることがポイントです。PCRに「q」が付いているのは、結果値が「定量化」されているという意味です。
たとえば、あなたが血糖の検査を受けたとします。その検査結果が単に「高い」だけだったらどう思いますか?ただ単に「高い」だけでなく「どの程度高いのか?」を知りたくないですか? 「今回の結果は120mg/dLなので基準を少しオーバーしてる」という結果でないと納得できませんよね。 このように、血液検査では結果が具体的な数値で出ることがあたりまえですが、この種の便検査では、あたりまえではありません。「陰性」か「陽性」かしかわからない検査がほとんどなのです。 この点だけでもこの検査が優れていることがわかります。
このほか、40以上の項目を調べることから、腹部の疾患や症状のみならず、糖尿病などの内分泌関係、にきびや乾癬などの皮膚疾患、自閉症などの精神疾患など、多くの疾患に応用できます。 このことから、GI-MAP検査の有用性は非常に高いのですが、便を採取したらアメリカの検査機関に送るため結果が出るまで1~2週間程度要することや、費用が高いといった点をあらかじめ考慮しておく必要があります。
腸内細菌叢のバランスが崩れると
- 腹痛
- 膨満感
- 便秘
- 下痢
- 胃炎、胃腸炎
- 胃食道逆流症
- 過敏性腸症候群
- SIBO(小腸内細菌異常増殖症)
- 潰瘍性大腸炎、クローン病
- 胃がん
- 自己免疫疾患(反応性関節炎、関節リウマチなど)
- アレルギー疾患(喘息、湿疹など)
この検査でわかること
- ディスバイオーシス(腸内細菌叢の異常)
- 病原細菌、酵母、真菌、寄生虫の有無とその量
- 胃腸・消化管の炎症
- 消化吸収機能の健康状態(消化・吸収不良、吸収能力)
- 水素、メタン、硫化水素を産生する菌の過剰増殖(腹部膨満や胃酸逆流を引き起こす、硫化水素が多いおならは臭い、メタンが多いと便秘になりやすい、水素が過剰だと食物の通過速度が早くなり栄養吸収が悪くなるなど)
- ピロリ菌の感染(胃炎、潰瘍、がんやSIBOの原因となり得る)
- 消化管粘膜のバリア機能の状態
- リーキーガット(オプション)
- IBS(過敏性腸症候群)、PI-IBS(感染後過敏性腸症候群)、SIBO
- ウイルス、病原菌への感染
- 膵外分泌機能不全(慢性下痢の原因になり得る)
- 免疫機能の低下
- クローン病、潰瘍性大腸炎のリスク
- 自己免疫疾患(関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎など)のリスク
この検査をお勧めする方
- 胃・大腸内視鏡検査で異常がないのに腹部に症状がある
- 腹部膨満感、ガス溜まりが常態化している
- 原因不明の便秘、下痢が続いている
- SIBO、SIFO、リーキーガット、IBSではないかと感じている
- 皮膚の湿疹、発疹
- 発達障害
- 自己免疫疾患
- 体重がなかなか減らない
- 糖尿病
- 細菌叢の健康状態を知りたい方
- プロバイオティクスサプリメントが必要か知りたい方
検査項目
※横にスクロールできます。
| 項目 | 説明 | マスト※1 | ヒスタミン※2 | LPS※3 | 水素※4 | メタン※5 | 硫化水素※6 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 【病原体】 | |||||||
| カンピロバクター Campylobacter |
食中毒でよくみられる病原菌。わずかな曝露でも感染することがある。激しい腹痛、下痢、発熱、倦怠感などが生じ、数日~数週間に及ぶこともある。 | ||||||
| クロストリジウムディフィシル毒素Aおよび毒素B C.difficile Toxin A/Toxin B |
特に抗菌薬の使用により増殖する。院内感染でよくみられる。毒素を出し、腸管壁に炎症を起こしたり損傷したりする。この値が高いと下痢、腹痛、吐き気、食欲不振、発熱などを起こす。 | ||||||
| 腸管出血性大腸菌 Enterohemorrhagic E. coli |
血便が出る。発熱は軽度。加熱が不十分な肉、生乳、飲料水等から感染する。志賀毒素を出し、溶血性尿毒症症候群を引き起こす場合がある。 | ||||||
| 大腸菌O157 E.coli O157 |
下痢、血便、吐き気のほか溶血性尿毒症症候群などを引き起こす場合がある。 | ||||||
| 腸管侵襲性大腸菌/赤痢菌 Enteroinvasive E. coli/Shigella |
汚染された食品を介して感染し、摂取後12~72時間で下痢、嘔吐、発熱、悪寒、倦怠感、腹部けいれんなどを起こす。侵襲性が高く腸壁を損傷する。重度では、血便や脱水症状を起こし、腎障害を引き起こす可能性がある。 | ||||||
| 毒素原性大腸菌 Enterotoxigenic E. coli LT/ST |
旅行者下痢症の原因菌ともいわれる。汚染された食品を介して感染する。 | ||||||
| 志賀毒素産生大腸菌(志賀毒素1および2) Shiga-like Toxin E. coli stx1/stx2 |
汚染された食品を介して感染する。この値が高いと下痢、腹痛を起こす場合がある。腸壁を損傷する場合がある。 | ||||||
| サルモネラ菌 Salmonella |
最もよくみられる食中毒の原因菌。鶏肉、卵、低温殺菌されていない牛乳など、生または調理不十分な食品や汚染された水を介して感染する。下痢、発熱、胃けいれんなどの症状を引き起こし、通常は感染後12~72 時間以内に現れる。健康な人では通常1週間以内に軽快する。汚染された食品の中にこの細胞がわずか10個あっても症状を引き起こすことがある。免疫力の低下、制酸剤や抗生物質などの使用、汚染された環境や食品源への曝露などにより感染リスクが高まる。 | ||||||
| ビブリオコレラ Vibrio cholerae |
汚染された水中に存在し、重度の下痢、嘔吐、脱水、発熱などの重篤な症状を引き起こす毒素を生成する。 | ||||||
| エルシニアエンテロコリチカ Yersinia enterocolitica |
豚、牛、鳥の腸管にも存在する。汚染された水や加熱不十分な豚肉、その他肉、乳製品などを介して感染する。曝露後4~7日で水様便または血が混じった下痢、腹痛、発熱、嘔吐などが生じる。炎症性腸疾患、特にクローン病と所見が似ている。鉄を好む性質があるため、特に遺伝性ヘモクロマトーシスを有する人は感染に注意する。この菌の尿路感染は、反応性関節炎をはじめとする炎症性疾患に関連している。 | ||||||
| 【寄生性病原体】 | |||||||
| クリプトスポリジウム Cryptosporidium |
人間と動物の両方に感染する。プール、湖、小川などの汚染された水源でよくみられ、誤って水を飲み込んだときに体内に入り込む可能性がある。体内に入ると、消化器系に影響を及ぼし、下痢、腹痛、吐き気、ガス溜まり、膨満感などの症状を引き起こす。健康な人では、通常2~3週間以内に軽快する。 | ||||||
| 赤痢アメーバ Entamoeba histolytica |
汚染された食品を介して感染する寄生虫。衛生状態の悪い地域に旅行したときなどに感染しやすい。感染しても必ず発症するとは限らず、腹痛や軟便など軽度の場合が多い。肝臓に感染したり、肺や脳など、体の他の部位に広がることがあるが、その発生率は低い。 | ||||||
| ジアルジア Giardia |
ジアルジア症と呼ばれる一般的な腸の感染症の原因で、下痢、腹痛、膨満感、倦怠感、嘔吐、体重減少、蕁麻疹、栄養失調、子どもの成長遅延、拒食症、脂肪便などを引き起こす。特に、栄養失調、免疫抑制、嚢胞性線維腺症の人に重大な症状を引き起こすことがある。汚染された食品や、人・動物との直接接触により感染する。嚢胞と呼ばれる硬い殻に包まれており、体外で長期間生存でき、一般的な消毒剤に耐性がある。体内に入ると嚢胞が開き、活動にある寄生虫が放出され、腸壁に付着して増殖する。ジアルジア症の診断にあたり、PCR法は、便中のジアルジア属を便100マイクロリットルあたり寄生虫を10個レベルで検出でき、軽度および無症候性の感染症を識別できるとされている。 | ||||||
| 【ウイルス病原体】 | |||||||
| アデノウイルス40/41 Adenovirus 40/41 |
胃腸炎を引き起こす。乳児や小児の下痢の一般的な原因。大人でも感染する。通常、発熱と水様性の下痢は1~2週間で軽快する。この40/は、無症候性キャリアの便中にも存在する可能性があり、特に治療を要しないこともある。この40/41は、胃腸に関するものだけでなく、気道感染から膀胱感染までさまざまな部位に感染する。重篤な症状になることは少ないが、免疫力が低下している人は注意する。 | ||||||
| ノロウイルスGIおよびGII Norovirus GI/II |
最も一般的な非細菌性胃腸炎の原因とされる。感染者との接触、または汚染された食品の摂取後24~48時間で発症する。症状として、嘔吐、腹痛、下痢、微熱、筋肉痛、倦怠感、頭痛などが挙げられる。安定性、耐熱性、耐寒性に優れ、感染力がきわめて強い。硬い表面では数週間、汚染された布地では最長12日間生存できる。感染すると結腸ではなく、小腸の微絨毛に影響を与える。感染者は回復しても、その後最長で2週間ウイルスを排出する可能性がある。 | ||||||
| 【ヘリコバクターピロリ】 | |||||||
| babA、cagA、dupA、iceA、oipA、vacA、virB、virC | 胃がんや胃潰瘍の原因の1つとされる一方で、特定のアトピー疾患、食道がんなどから宿主を守る働きも示唆されている。世界中の人口の約半数が有するといわれている。GI-MAPでは、8種類の遺伝子を調べる。これにより、抗生剤による3剤併用療法を行っても駆除できなかった場合に、次の治療を検討するうえでこの検査が有用となり得る。ピロリ菌は、その遺伝子の種類によって、リスクとなる疾患が異なり、たとえば、babAやCagAは胃がんと関連していたり、iceAはがんとは関連性はないものの消化不良や胃潰瘍などと関連していたりといったことがわかっている。急性感染では胃酸の分泌が低下し、慢性感染では臓器の部位によって分泌の低下や過剰が起こる場合がある。また、胃酸分泌の低下によって、SIBOが引き起こされることもある。ピロリ菌は細菌叢の多様性を低下させる可能性があるほか、ヒスタミンの放出を刺激(過敏性腸症候群、食物アレルギーの原因になり得る)するという報告もある。 | 〇 | 〇 | ||||
| 【共生/キーストーン細菌】 | |||||||
| バクテロイデスフラジリス Bacteroides fragilis |
人間の腸内に最初に定着する微生物の1つ。普段は無害であるが、高い腸管透過性、外傷、手術などによって血流に入ると重篤な感染症を引き起こすことがある。この細菌が多いと消化能力が低下したり便秘を起こしたりする可能性があり、少ないと腸内の抗炎症活性が低下する可能性がある。 | 〇 | |||||
| ビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌) Bifidobacterium spp. |
腸内微生物叢に存在する有益な細菌の1つ。乳糖耐性の改善、下痢の予防、免疫システムの強化、食物アレルギーの軽減、悪玉菌の増殖抑制、腸内pHのコントロールなどの健康上の利点がある。この細菌が少ない場合、繊維の摂取が不足しているか、粘膜の状態が悪くなっている可能性がある。 ピロリ菌に対する阻害効果があるとされている。 |
||||||
| エンテロコッカス属(腸球菌) Enterococcus spp. |
腸球菌は、粘膜層下の腸上皮に沿って定着し、ここに定着することで腸の粘膜バリア機能を高める。また、バクテリオシンを産生して特定の菌による食中毒予防に重要な役割を果たしている。この細菌が多い場合、消化能力の低下、小腸腸内細菌叢の異常(SIBO)、無塩酸症(胃酸の欠乏)を反映している可能性がある。腸球菌は、粘膜に関連する微生物叢と考えられており、この細菌が少ないと粘膜や上皮の健康状態が低下している可能性がある。 | ||||||
| エシェリヒア属(大腸菌) Escherichia spp. |
経腟分娩中に母胎の糞便に曝露することで人間の腸に最初に定着する細菌の1つ。生後最初の数日で、バクテロイデス種やビフィズス菌種が定着して増殖できるよう嫌気性の環境を作る。ほとんどの菌株は非病原性であり、病原性大腸菌を阻害する働きがある。この値が高い場合、腸の炎症活動が高くなっている可能性があり、低い場合、粘膜の健康状態が低下しており、病原性大腸菌に対する防御能力が低下している可能性がある。 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
| ラクトバチルス属(乳酸菌) Lactobacillus spp. |
プロバイオティクスに多く使用されている。この値が高い場合、消化能力の低下や炭水化物の過剰摂取の可能性があり、この値が低い場合、炭水化物の摂取が不足しているか、塩分の摂取が多い可能性があるほか、粘膜の健康状態が低下している可能性がある。ピロリ菌に対する阻害効果があるとされている。 | 〇 | |||||
| エンテロバクター属 Enterobacter spp. |
院内感染の原因菌として知られている。この値が高い場合、腸の炎症活動が増加している可能性があり、低い場合、粘膜の健康状態が低下している可能性がある。 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
| アッカーマンシアムシニフィラ Akkermansia muciniphila |
腸内に定着する善玉菌の1つで、クロストリジウム菌などの他の菌が酪酸などを産生するのをサポートする働きがある。この値が低いと、肥満、糖尿病、代謝機能障害、心血管障害のリスクが高まり、この値が高いと、多発性硬化症のリスクが高まる。ただし、日本人は他の人種・民族よりも保有率が低いとされる。 | ||||||
| フィーカリバクテリウム プラウスニッツイ Faecalibacterium prausnitzii |
腸内に定着する善玉菌の1つで、クロストリジウム菌などの他の菌が酪酸などを産生するのをサポートする働きがある。この値が低いと、肥満、糖尿病、代謝機能障害、心血管障害のリスクが高まり、この値が高いと、多発性硬化症のリスクが高まる。ただし、日本人は他の人種・民族よりも保有率が低いとされる。 | 〇 | |||||
| ローズブリア属 Roseburia spp. |
短鎖脂肪酸を生成し、エネルギー恒常性のバランスを維持する。結腸の運動性を促進し、免疫をサポートするほか、炎症の抑制機能もある。この値が低いと、過敏性腸症候群、肥満、2型糖尿病、アレルギー、心血管疾患のリスクが増加する。 | 〇 | |||||
| 【細菌門】 | |||||||
| バクテロイデス Bacteroidetes |
ファオーミキューテス門とともに、口、鼻、喉を含め、消化管全体に多く存在する優性細菌門。 | 〇 | |||||
| ファーミキューテス Firmicutes |
バクテロイデス門とともに、口、鼻、喉を含め、消化管全体に多く存在する優性細菌門。食物繊維の代謝、ビタミン等の合成、免疫系の維持、感染抑制などの働きがある。この菌が多いとメタン産生菌も多い可能性がある。 | 〇 | |||||
| ファーミキューテス/バクテロイデス比 Firmicutes:Bacteroidetes Ratio |
腸内のファーミキューテスとバクテロイデスの比率。高値、低値では細菌叢のバランスが崩れていることを示す。肥満者ではこの値が高く、減量するとこの値も低下するとの報告もあるが、これに異を唱える学者もいる。いずれにしても肥満者では細菌叢のバランスが崩れていることは明らかである。高脂肪食によってこの値も上昇する。細菌叢のバランスが崩れるのは肥満そのものが原因ではなく、食事によるものとする報告もある。この値が高い場合、低脂肪食、プロバイオティクス、プレバイオティクスによる治療が推奨される。グルタミン30グラムを2週間毎日摂取するとこの値が低下したとの研究もある。 | ||||||
| 【日和見菌/細菌の異常増殖】 | |||||||
| バチルス属 Bacillus spp. |
ファーミキューテス門に属するグループ。一部の菌株はプロバイオティクスに使用されている。この値が高い場合、消化機能の低下、SIBO、便秘などの可能性がある。 | ||||||
| エンテロコッカスフェカリス Enterococcus faecalis |
腸内に自然に存在する細菌の1つで、健康な人では無害であることが多い。最近、この菌の薬剤耐性菌が増えている。この値が高い場合、胃酸の減少、消化機能の低下、SIBO、便秘などが引き起こされる可能性がある。 | 〇 | |||||
| エンテロコッカスフェシウム Enterococcus faecium |
この菌の薬剤耐性菌が増えている。この値が高い場合、胃酸の減少、消化機能の低下、SIBO、便秘などが引き起こされる可能性がある。 | ||||||
| モルガネラ属 Morganella spp. |
この菌の薬剤耐性菌が増えている。この値が高い場合、胃酸の減少、消化機能の低下、SIBO、便秘などが引き起こされる可能性がある。 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| シュードモナス属 Pseudomonas spp. |
自然界に広く存在し、牛乳、肉、魚介類、野菜などが汚染される可能性がある。 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
| シュードモナスエルギノーザ(緑膿菌) Pseudomonas aeruginosa |
感染症の原因菌として最も一般的な種の1つで、腸管の炎症、上皮バリアの機能不全、腸管透過性の増加を引き起こすことがある。ストレス、外傷、手術、がんなどによってその毒性が増強される。この値が高い場合、腸の炎症活動が増加している可能性があり、腹痛や軟便を引き起こすことがある。この菌の一部の株は、細胞にダメージを与える毒素を産生する。 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| ブドウ球菌属 Staphylococcus spp. |
グラム陽性の球菌で構成される菌属で、人や動物の粘膜や皮膚だけでなく、広く環境中に存在する。 | ||||||
| 黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus |
ファーミキューテス門のグラム陽性菌。この値が高い場合、消化能力の低下や腸の炎症活動の可能性がある。また、一部の株は毒素を産生し、これが軟便や下痢を引き起こす。 | 〇 | |||||
| 連鎖球菌属 Streptococcus spp. |
ファーミキューテス門のグラム陽性菌。体内に広く存在し、通常は人体に問題はない。この値が高い場合、胃酸の低下、プロトンポンプ阻害剤の使用、消化能力の低下、SIBO、便秘などの可能性があるほか、腸の炎症活動が活発になっており、軟便の原因になり得る。 | 〇 | |||||
| デスルフォビブリオ属 Desulfovibrio spp. |
30種以上を含むグラム陰性菌属。細胞のシグナル伝達に影響を及ぼす。低値では酸化ストレスを軽減し、高値では毒性を有する硫化水素を産生する。高濃度の硫化水素は、結腸がん、潰瘍性大腸炎、結腸細胞への損傷との関連性がある。一方、硫化水素の濃度が正常であると、腸粘膜の健康に寄与することのほか、病原体の抑制、抗酸化能の促進をサポートする。このため、この値が低値であると、腸の健康に悪影響を与える可能性がある。デスルフォビブリオ種は、無症候性に消化管内に運ばれることもあれば、日和見病原体となることもある。また、細菌の異常増殖や潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患との関連性も示唆されている。 | 〇 | |||||
| メタノバクテリウム科 Methanobacteriaceae (family) |
メタンガスを産生する細菌様の微生物。共生細菌が炭水化物を発酵し、短鎖脂肪酸を生成するのをサポートしており、腸内の生態系で重要な役割を果たしている。この値が高い場合、慢性便秘、SIBO、IBSの可能性がある。特に、便秘型の過敏性腸症候群では、この科に属するメタノブレビバクタースミシーとメタンガスの増加が報告されている。メタンガスが過剰に産生されると、腸の蠕動運動が低下し、ガス溜まりや便秘の原因となり得る。 | 〇 | |||||
| シトロバクター属 Citrobacter spp. |
メタンガスを産生する細菌様の微生物。共生細菌が炭水化物を発酵し、短鎖脂肪酸を生成するのをサポートしており、腸内の生態系で重要な役割を果たしている。この値が高い場合、慢性便秘、SIBO、IBSの可能性がある。特に、便秘型の過敏性腸症候群では、この科に属するメタノブレビバクタースミシーとメタンガスの増加が報告されている。メタンガスが過剰に産生されると、腸の蠕動運動が低下し、ガス溜まりや便秘の原因となり得る。 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
| シトロバクターフロインディー Citrobacter freundii |
この値が高い場合、腸の炎症活動が増加している可能性がある。 | 〇 | 〇 | ||||
| クレブシエラ属 Klebsiella spp. |
プロテアバクテリア門のグラム陰性菌。特に、尿中ヒスタミン値の高い過敏性腸症候群患者でクレブシエラアエロゲネスの量が多いことが確認されており、発酵性糖質食品の摂取を控えると尿中ヒスタミン値が低下したとの報告がある(ヒスタミンは過敏性腸症候群の症状を悪化させる)。 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| クレブシエラニューモニエ(肺炎桿菌) Klebsiella pneumoniae |
口腔や気道によくみられる。下痢、ガス、腹痛、膨満感を引き起こすことがある。抗生物質の長期使用でリスクが高まる。腸内でヒスタミンを放出する可能性がある。この値が高い場合、腸の炎症活動が増加している可能性がある。 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| マイコバクテリウムアビウム亜種パラ結核 M.avium subsp. paratuberculosis |
放線菌門の細菌種。この値が高い場合、クローン病や関節リウマチとの関連性が示唆される。 | ||||||
| プロテウス属 Proteus spp. |
日和見感染症の原因病原体。消化管がこの菌属の貯蔵庫になり得、土壌や水中のプロテウス種を測定することで、その土壌や水がどの程度糞便に汚染されているかがわかる。この菌属に汚染された食品や水を摂取すると食中毒を引き起こすことがある。プロテウスはリポ多糖類を産生して炎症を増大させる可能性がある。 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| プロテウスミラビリス Proteus mirabilis |
プロテオバクテリア門のグラム陰性菌。ヒトのプロテウス感染症で最もよくみられる原因菌。土壌、水域、施設、病院などの環境に広く存在。重篤な創傷感染では、全身性の炎症反応や敗血症を引き起こすことがある。ペットや野生動物が感染源となる場合もある。感受性の高い人に炎症性関節炎を引き起こすことがある。尿路感染の原因菌としてもよく知られている。この値が高い場合、腸の炎症活動が増加している可能性があるほか、軟便や下痢を引き起こす場合がある。 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| エンテロバクター属 Enterobacter spp. |
プロテオバクテリア門のグラム陰性菌属。同じ分類科に属する大腸菌と密接に関連している。この値が高い場合、腸の炎症活動が増加している可能性があり、この値が低い場合、粘膜の健康状態が低下している可能性がある。 | 〇 | |||||
| エスケリキア属(大腸菌属) Escherichia spp. |
プロテオバクテリア門のグラム陰性菌属。正常な腸内細菌叢。ほとんどの大腸菌は非病原性(病原性大腸菌株についてはGI-MAPの「病原体」セクションで個別に測定)。この値が高い場合、腸の炎症活動が増加している可能性があり、この値が低い場合、粘膜の健康状態が低下しており、病原性大腸菌に対する防御能力が低下している可能性がある。 | 〇 | |||||
| フソバクテリウム属 Fusobacterium spp. |
フソバクテリア門のグラム陰性菌属。腸内や口腔内に存在する。全身性強皮症などの自己免疫疾患のほか、大腸がん、炎症性腸疾患、肥満、便秘型IBSなどさまざまな疾患とも関連があるとされている。 | 〇 | 〇 | ||||
| プレボテラ属 Prevotella spp. |
バクテロイデス門のグラム陰性菌属。関節リウマチと関連している。ヒトの腸内に自然に存在する細菌群で、炭水化物や繊維質を分解する。一部のプレボテラ属の菌は炎症性疾患と関連している。この値が高い場合、消化能力の低下やでんぷんの多い食事が過剰である可能性がある。 | ||||||
| 【真菌/酵母】 | |||||||
| カンジダ属 Candida spp. |
消化管や皮膚粘膜に自然に存在する酵母の一種。正常な便検体の40~80%で検出される。ただし、この値が高くなり過ぎたり、他の有益な菌群とのバランスが崩れたりすると、さまざまな症状を発症するようになる。 | 〇 | |||||
| カンジダアルビカンス Candida albicans |
皮膚、口、消化管に存在する酵母菌の一種。カンジダが異常に増殖して起こる真菌性腸内毒素症やカンジダ過敏症は、原因がまだ明確になっていないが、胃腸の不調、疲労、倦怠感、皮膚の発疹、頻尿、筋肉痛、関節痛、下痢、便秘などを引き起こす。 | 〇 | |||||
| ゲオトリクム属 Candida albicans |
腸内に存在する環境菌の一種。免疫抑制状態の人や火傷などの外傷を負った人に最も多く病気を引き起こす可能性がある。下痢、腸炎、クローン病、過敏性腸症候群などの胃腸疾患や、全身の健康状態、栄養吸収と関連がある。一部の菌株はソフトチーズの生産に使用される。この値が低い場合、食事による一時的な影響が考えられる。 | ||||||
| ミクロスポリジウム(微胞子虫) Microsporidium spp. |
当初はカイコの寄生虫とされていたが、現在は真菌とされている。GI-MAPでは、胃腸に影響を与える微胞子虫「エンセファリトゾーン・インテスティナリス」を検出する。HIV患者、臓器移植を受けた患者、化学療法を受けている患者など、免疫が抑制されている人でよく感染するが、健康な人にも感染することがあり、その場合、下痢がよくみられる。 | ||||||
| ロドトルラ属 Rhodotorula spp. |
土壌、植物、浴室、液体(牛乳、水等)など、広く環境に存在する菌類。ほとんどのヒトに存在する常在菌と考えられている。免疫抑制患者では病気を引き起こす可能性がある。 | ||||||
| 【ウイルス】 | |||||||
| サイトメガロウイルス(CMV) Cytomegalovirus |
サイトメガロウイルス(CMV)は、日本人の多くが母子感染を介して保有するヘルペスウイルス。普段は体内に潜伏して症状がないものの、免疫力が低下または抑制されている場合に再活性化して、発熱、脳炎、大腸炎など、さまざまな症状が出てくることがある。GI-MAPでこのウイルスが陽性の場合、過去の感染ではなく、現在消化管で活動中の感染であることを示す。陽性でも症状がみられない場合は、特に治療は必要ない。糞便検査によるCMV値は、血漿CMV値と相関していることからCMVによる胃腸疾患の指標となり得る。炎症性腸疾患(IBD)患者でCMV DNAのレベルが高いことがわかっている。IBDの病態生理において、これまで考えられていた以上にCMVが影響していることが示唆される。IBD患者のCMV感染率は10~36%との報告もある。 | ||||||
| エプスタインバーウイルス(EBV) Epstein-Barr Virus |
伝染性単核球症を引き起こすことがあるヘルペスウイルス。全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、1型糖尿病、関節リウマチなどの自己免疫疾患の発症に関与していると考えられている。狼瘡や全身性硬化症といった一部の自己免疫疾患では、健康な人よりもCMVに対する抗体がはるかに高いことがわかっている。GI-MAPでこのウイルスが陽性の場合、過去の感染ではなく、現在消化管で活動中の感染であることを示す。EBVウイルスは上皮細胞に侵入するため、特にピロリ菌にも同時感染している場合、胃がんのリスクを高める可能性がある。IBD患者のEBV感染率は30~64%。IBD患者では、このウイルス量が多いほど、腸管粘膜の損傷度合いが高いことが確認されている。 | ||||||
| 【寄生虫】 | |||||||
| ブラストシスチスホミニス Blastocystis hominis |
ヒトや動物の腸内に生息する単細胞生物。症状の有無を問わず世界中の人にみられる。ブラストシスチス感染症の主な症状は、下痢、水様便、腹痛、肛門のかゆみ、便秘、ガスの過剰産生、皮膚疾患などがある。過敏性腸症候群などの慢性消化器疾患との関連性が疑われている。 | ||||||
| キロマスティックスメスニリ(メニール鞭毛虫) Chilomastix mesnili |
消化管に生息する単細胞生物。基本的に非病原性であるが、下痢に関する症例の報告もある。 | ||||||
| サイクロスポラ属 Cyclospora spp. |
サイクロスポラ症という腸の感染症を引き起こす寄生虫群。特に熱帯、亜熱帯地域の汚染された水や食品を介して感染し、下痢、腹痛、食欲不振、体重減少、嘔吐などの症状を引き起こすほか、頭痛や微熱など、インフルエンザのような症状を引き起こすこともある。通常は、7日程度で軽快する。 | ||||||
| ディエントアメーバフラジリス(二核アメーバ) Dientamoeba fragilis |
ヒトやブタの消化管に生息する単細胞生物。旅行者下痢症でよくみられる。無症状のこともあれば、基準値を超えない中程度の量でも、下痢、腹痛、発熱などの症状を引き起こすことがある。 | ||||||
| エンドリマックスナナ(小形アメーバ) Endolimax nana |
消化管によくみられる単細胞生物。汚染された食品や水を介して感染する。非病原性であると考えられ、無症状であることが多い。 | ||||||
| 大腸アメーバ Entamoeba coli |
大腸に生息するアメーバで、病原性はないとされている。ただし、検査で存在が確認された場合、他の病原性微生物がいる可能性がある。 | ||||||
| ペンタトリコモナスホミニス(腸トリコモナス) Pentatrichomonas hominis |
汚染された水や食品を介して感染する寄生虫。基本的に病原性はないとされているが、小腸がんの患者に多くみられるとの論文もある。症状が出ることはほとんどないが、腸内細菌叢に異常を来すこともある。犬や猫にも感染する。 | ||||||
| ズビニ鉤虫 Ancylostoma duodenale |
ヒトに感染する腸の鉤虫の一種で、皮膚に侵入して鉤虫感染症を引き起こす。体長10~12mm。感染幼虫が付いた食品を摂取すると、主に小腸で成虫となり、1~1.5年間生存する。感染幼虫の一部は腸管を経由して肺に達する。初期症状は幼虫が侵入した皮膚のかゆみと発疹、重篤になると腹痛、下痢、疲労、体重減少、貧血、食欲不振などを起こす。鉤虫感染は、子どもの身体的および認知的成長に影響を及ぼす可能性がある。また、宿主の血液を持続的に吸い取ることから、小児や妊娠中の女性に鉄欠乏性貧血を引き起こすことがある。犬や猫の小腸にも生息するためペットも暴露源となり得る。 | ||||||
| ヒト回虫 Ascaris lumbricoides |
ヒトに最もよくみられる腸の寄生虫。汚染された水や食品を介して感染する。無症状の場合や肺症状、重度の消化器症状を起こすことがある。感染初期には発熱、咳、喘息、呼吸困難などがみられ、後期には腹痛、悪心、嘔吐、頻回な咳、のどのちくちく感、膵炎などがみられる。初期段階では、血液中の好酸球数が高くなることがあるが、便中の寄生虫卵や寄生虫検査は陰性であることが多い。 | ||||||
| アメリカ鉤虫 Necator americanus |
ヒトに感染する腸の鉤虫の一種で、皮膚に侵入して鉤虫感染症を引き起こす。体長10~12mm。感染幼虫が皮膚から侵入すると、血流にのって肺に達し、肺胞から気管、咽頭、胃を経由して小腸に達して成虫となる。初期症状は幼虫が侵入した皮膚のかゆみと発疹、重篤になると腹痛、下痢、疲労、体重減少、貧血、食欲不振などを起こす。鉤虫感染は、子どもの身体的および認知的成長に影響を及ぼす可能性がある。また、宿主の血液を持続的に吸い取ることから、小児や妊娠中の女性に鉄欠乏性貧血を引き起こすことがある。犬や猫の小腸にも生息するためペットも暴露源となり得る。 | ||||||
| トリキュリストリキウラ(鞭虫) Trichuris trichiura |
土壌を介して、またはヒトからヒトへに感染する回虫で鞭虫症を引き起こすことがある。主に衛生環境が悪い地域で蔓延する。感染すると無症状の場合もあれば、下痢や血便を起こすこともある。貧血を起こしている場合、鉄のサプリメントが有用な場合もある。 | ||||||
| テニア属(サナダムシ) Taenia spp. |
ヒトや動物に感染を引き起こす条虫。汚染された加熱不十分な豚肉(有鉤条虫)や牛肉(無鉤条虫)を摂取した後に便中に見つかることがある。1匹の条虫でも感染を引き起こす。感染しても無症状であるか症状があっても軽症であることが多い。症状は、腹痛、吐き気、脱力感、食欲亢進、食欲不振、頭痛、便秘、めまい、下痢、肛門のかゆみ、貧血などがある。PCR法が感度が高く、便中の有鉤条虫種を高感度に特異的に検出できる。 | ||||||
| 【腸の健康マーカー】 | |||||||
| ステアトクリット Steatocrit |
膵臓不全や小腸吸収不良患者の脂肪便を検出するために広く使用されている検査法で、便中の脂肪量を測定する。通常、脂肪は胆汁酸で乳化された後、小腸で吸収される。1日の糞便中には約2~6gの脂肪が含まれるとされており、便中の脂肪量が多い場合、消化不良や吸収不良の可能性がある。この値が高い場合、低塩酸症、消化不良、吸収不良、膵臓機能不全、胆汁酸塩の欠乏、不十分な咀嚼、セリアック病などが考えられる。 | ||||||
| エラスターゼ-1 Elastase-1 |
タンパクを分解する酵素の1つで、膵臓のみから分泌され、膵臓の機能を直接反映する。膵臓の機能がうまく働かなくなり、炎症を起こすと膵臓機能不全となる。膵臓機能不全になると、脂溶性ビタミンなどの栄養素を吸収しにくくなるため、脂肪便、腹痛、吸収不良などの症状を示す。低値の原因として、膵臓機能の低下、胆石、ピロリ菌が存在する場合の低塩酸症、嚢胞性線維腺症が挙げられるほか、SIBOでもみられる場合がある。また、ベジタリアンで値が低いことがある。100μg/g未満の場合、重度の膵外分泌機能不全が疑われる。 | ||||||
| βグルクロニダーゼ β-Glucuronidase |
肝臓、腎臓、腸上皮、内分泌、生殖器官の細胞や腸内の一部の細菌によって生成される酵素で、化学物質や毒素の分解に関係している。この酵素が血漿中で上昇すると、乳がんや前立腺がんなどのホルモンに敏感ながんのリスクが増加する。この値が高い場合、SIBO、大腸がんリスクの増加、解毒不良、毒素または薬物への過剰曝露などが考えられる。ベジタリアンではこの値が低く出ることがある。 | ||||||
| 免疫学的便潜血(FIT) Occult Blood - FIT |
大腸がんのスクリーニング検査法で、便中のヘモグロビンの量を測定する。陽性の場合、出血性潰瘍、炎症性腸疾患、がん、腸ポリープ、上部消化管出血などが考えられる。 | ||||||
| 分泌型IgA Secretory IgA |
異物が侵入したときにそれを攻撃するため消化器系に分泌される抗体タンパク質(免疫グロブリン)。病原性の微生物に対する最初の免疫防御として働く。この免疫グロブリンは、腸内微生物叢に影響を与え、腸のバリア機能を維持するために、腸内病原体やアレルゲンと複合体を形成し、それらが腸管障壁を透過するのを防ぐ。分泌型IgAの機能が低下すると、腸の感染症、アレルギー性疾患、炎症性疾患のリスクが増加する可能性がある。慢性的なストレスも分泌型IgAのレベルを乱すことがある。高値は、慢性感染や炎症反応に対して活性化された免疫応答を示している可能性がある。低値の場合、腸管免疫機能が低下している、慢性的にストレスを受けている、免疫力が低下している、タンパク質不足の栄養失調などが考えられる。 | ||||||
| 抗グリアジンIgA Anti-gliadin IgA |
グリアジンは、小麦や大麦、麦芽、ライ麦などの穀物に含まれるタンパク質「グルテン」の成分。糞便中に抗グリアジン抗体が存在するということは、食事で摂ったグルテンに対して腸内で免疫反応を示している可能性がある。グリアジンは腸の免疫を刺激するため抗グリアジン抗体が血清で検出できるようになるかなり前に糞便中で検出される。セリアック病の診断にも用いられる。高値の場合、グルテンフリー食への切り替えを検討する。また、腸管バリアのサポート(亜鉛カルノシンやLグルタミンのサプリメント)も考える。 | ||||||
| 好酸球活性化タンパク質(EDN、EPX) Eosinophil Activation Protein(EDN、EPX) |
感染症(特にウイルス感染症)やアレルギー反応、炎症反応時に、腸管腔内で活性化された好酸球によって放出されるタンパク質で、便中で検出される。強力な細胞毒性を持ち、さまざまな炎症性疾患やマスト細胞が関わる病態で重要な役割を果たす。腸内でこのタンパク質が蓄積している場合、炎症や組織損傷が疑われる。便中のこのタンパク質の量は、消化管の慢性炎症の客観的な尺度となり得る。高値の場合、呼吸器アレルギー、喘息、食物アレルギー/過敏症、IBD、IBS、好酸球性食道炎、機能性ディスペプシア、胃酸の逆流、腸管バリアの損傷/機能不全、腸内寄生虫などが考えられる。 | ||||||
| カルプロテクチン Calprotectin |
炎症に反応して白血球から放出されるカルシウム結合タンパク質で、好中球に高濃度で存在する。また、単球、マクロファージ、腸上皮細胞にもみられる。炎症性腸疾患(IBD)の診断とモニタリングの標準的なマーカーとされているほか、IBDと過敏性腸症候群を区別するのにも用いられる。IBDの診断には有用なマーカーであることは広く認められているが、IBDの基準値については、50μg/gとする検査や100μg/gとする市販の検査、あるいは400~1000μg/gとする研究など、統一見解は得られていない。しかし、600μg/gを超えるとIBDと強く相関する。このほか、非ステロイド性抗炎症薬の過剰摂取による腸疾患で値が高くなることがあるため、非ステロイド性抗炎症薬を一時中止してから検査する方がよい場合もある。高値の場合、腸の感染症、炎症促進性腸内細菌叢の異常、食物アレルゲン、毒素、非ステロイド性抗炎症薬の使用、炎症性腸疾患、ポリープ、憩室炎、結腸直腸がんなどが考えられる。 | ||||||
| 【オプション検査】 | |||||||
| ゾヌリン Zonulin |
腸の粘膜バリアを調節するタンパク質。消化管の粘膜には細胞間をつなぐ「タイトジャンクション」というバリア機能が形成されており、腸を通る食べかすや毒素、細菌等が組織に侵入するのを防いでいる。ゾヌリンは、このタイトジャンクションを開く働きがある。いわゆるこの水門が開いてしまうと、食べかすや毒素、細菌等が組織、血流に侵入し、免疫機能不全や食物アレルギー、過敏性腸症候群、自己免疫疾患などの原因となる「リーキーガット」を引き起こす。高値の場合、グルテンフリー食への切り替えや食物過敏症に対応する。Lグルタミン酸、亜鉛カルノシン、プロバイオティクス等のサプリメントで腸バリアをサポートする。 | ||||||
| グルテンペプチド Gluten Peptide |
便中のグルテンの量。検査前2~4日間のグルテンの摂取を反映する。グルテンフリーの食事を心がけているか、意図せずグルテンが含まれる食事を摂っていないかを確認できる。 | ||||||
| 総合抗生物質耐性遺伝子パネル Universal Antibiotic Resistance Gene Panel |
10種類の抗生物質クラスについて55の遺伝子の有無を調べる。これにより、ある病原菌の治療のため抗生剤を使用するにあたり、どの種類の抗生剤が効かないか、あるいは効きづらいかを事前に把握でき、その抗生剤を避けることで、遠回りせず、効率的および効果的な治療が期待できる。入院歴のある人、抗生剤による治療歴のある人、頑固な慢性感染症がある人に有用。 | ||||||
| StoolOMX | 便中の25種類の胆汁酸と9種類の短鎖脂肪酸の量を調べる検査。これにより、胆汁性下痢症、腸管運動能、胆汁酸不足による便秘等に関する情報が得られる。詳細はこちら。 | ||||||
※1 マスト細胞を活性化する細菌。マスト細胞の活性化は、過敏性腸症候群や食物アレルギーなどの原因となることがある。
※2 ヒスタミン産生菌。ヒスタミンが過度に産生されると、マスト細胞が活性化されて過敏性腸症候群などを引き起こすほか、食物アレルギーの原因にもなり得る。
※3 LPS(リポ多糖)産生菌。LPSが過剰になるとマスト細胞が活性化され、過敏性腸症候群や食物アレルギーなどの原因となることがある。
※4 水素産生菌。水素には抗酸化作用がある一方で、これをエサにして増える硫酸還元菌は、たとえば便秘型過敏性腸症候群を引き起こすことがある。
※5 メタン産生菌。メタン産生菌が多いと、腸管の運動が低下して食物の大腸通過時間が長くなり、慢性便秘を引き起こすことがある。
※6 硫化水素産生菌。硫化水素は、腸管の運動能や内臓の神経過敏に影響する可能性が示唆されている。また、硫化水素のが過剰に産生されるとおならが臭くなる。
GI-MAP検査の費用
| 診療メニュー | 料金(税込み) |
|---|---|
| GI-MAP検査 | 90,000円~110,000円 (その時期の為替レートによる) |
| 初診料 | 11,000円(25分) |
| 再診料(結果説明) | 8,800円(20分) |
※必ず電話で予約をおとりください。
※自費診療枠:月・火・金・土の14:00~15:00(祝日を除く)
KIRIN MicroBiome
注:この動画は2分33秒辺りから音が出ます。
- ショットガンメタゲノムという近年米国を中心に主に研究分野で導入が進んでいる解析手法。これにより細菌の種類がさらに細かくわかる(イメージとしては、「アジア人」までしかわからなかったのが「日本人」まで特定できる)。
- 不足細菌の種類がピンポイントでわかるため、プロバイオティクスを選ぶ際に参考になる。
- 多様性スコア、消化力スコア、腸バリアダメージスコアなど、各種スコアリングがわかりやすい。
- 真菌の割合もわかるため、SIFOの参考になる。
- ヨーグルトやサプリメントに入っている菌(23種類)の割合もわかる(ヨーグルトを選ぶ際の目安になる)。
お勧めのプロバイオティクスとファイバーがわかる
結果レポートには、不足している細菌に基づいてお勧めのプロバイオティクスやファイバー製品が提案されます(3日分のファイバーのサンプル付き)。
KIRINの医療機関専用販売サイトから、提案された製品を購入することができます。


| 項目 | 料金(税込み) |
|---|---|
| MicroBio Me検査パック (検査料+初回カウンセリング料(15分)+結果説明(30分)を含む) |
56,000円 |
※予約制(月・火・金・土の14:00~15:00)です。
※検体を米国に送るため結果が出るまで6~9週間。
※お申し込みはお電話にて予約をおとりください。
※初回カウンセリング~結果説明まで、すべて院長が対応します。
SYMGRAM

- 約27,000人の大規模な日本人の腸内細菌叢解析データベースを活用している。
- 近年SIBO・IBSへの影響が明らかになりつつある口腔内細菌43種類を測定できる。これによりどの程度口腔内細菌が腸に達しているのかの情報を得ることができる。
- 各種短鎖脂肪酸産生菌の割合がわかる(IBS・SIBOで重要指標)。
- 精神に関する物質を産生する細菌の割合がわかる。
- 硫化水素産生菌(ISOに参考になる)、ヒスタミン産生菌(IBSに関連)、エタノール産生菌(リーキーガットに関連)の割合がわかる。
- 30以上の疾患リスクがわかる。


| 項目 | 料金(税込み) |
|---|---|
| SYMGRAM検査パック (検査料+初回カウンセリング料(15分)+結果説明(30分)を含む) |
66,000円 |
※検査キットをお支払いいただいてからキットを注文します。
※結果が出るまで約1ヵ月かかります。
※お申し込みはお電話にて予約をおとりください。
※初回カウンセリング~結果説明まで、すべて院長が対応します。
MyKinso


腸内には1,000種類以上の腸内細菌が住みついており、その数は約100兆個にも及び、これは全身の細胞数の10倍にもなります。また、体内のゲノムよりも100倍も多く遺伝子をエンコードしていると考えられています[1]。これらの細菌は、とりわけ大腸に多く生息しており、花畑をイメージして腸内フローラと呼ばれることもあります。これだけの数で構成される腸内フローラです。一旦バランスが崩れると、体にさまざまな悪い影響が出てくることは容易に想像できるでしょう。その悪い影響には、肥満、炎症性腸疾患、自己免疫疾患、がん、精神疾患などがあります[2]。
腸内フローラには個人差があり、年齢、生活習慣、ストレスなどによって状況は変わります。
菌の多様性が高いほど、環境変化やストレスへの耐性が強いとされています。
参考元
[1] Ley, R. E., Peterson, D. A. & Gordon, J. I. Ecological and evolutionary forces shaping microbial diversity in the human intestine. Cell 124, 837–848 (2006)
[2] Bull MJ, Plummer NT. Part 1: The Human Gut Microbiome in Health and Disease. Integr Med (Encinitas). 2014 Dec;13(6):17-22. PMID: 26770121; PMCID: PMC4566439.
腸内フローラ検査で分かること
腸内フローラの総合判定
A,B,C,D,Eの5段階評価です。多様性、短鎖脂肪酸、腸管免疫、口腔常在菌の4つの指標に基づいてます。
大腸内視鏡検査のおすすめ度
大腸がん患者の腸内細菌叢にはフソバクテリウムが含まれる割合が高いことがわかっています。このフソバクテリウムの占める割合が10%以上になった場合に「異常あり」として注意喚起されます。大腸内視鏡や大腸CTの受診をお勧めします。
多様性度
存在する菌の「種類の数」と、それがどの程度まんべんなく存在しているかの「均等度」の2つに基づいて算出されます。多様性が低いほどさまざまな疾患リスクが高くなります。
健康長寿菌の判定
A(豊富)、B(平均的)、C(不足)の3段階評価です。ビフィズス菌とフィーカリバクテリウム菌に着目した指標です。
短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸は「天然の薬」ともいわれ、肥満予防や代謝促進、免疫機構の調整などに寄与しています。
腸管免疫
悪い細菌の定着や増殖を防ぐとされる「腸管バリア」など、腸管内の免疫機構に深く関わる菌のバランスを評価します。
口腔常在菌
- 健康な状態であれば通常問題になりませんが、極端に多いと腸管内の菌叢バランスが崩れ、腸内環境が悪くなります。
- 大腸がん患者に多くみられるストレプトコッカス属などの菌も調べます。
- 便やガスの臭いの元になるガンマプロテオバクテリア網も調べます。
- 口腔常在菌の占有率を確認でき、歯みがきや歯周病の状態などについて情報が得られます。
ダイエット・美容
- FB比を確認できます。痩せ型の人ではFB比が低く、肥満の人では高いことがわかっています。
- プレボテラ属菌とバクテロイデス属菌の比率(PB比)を確認できます。この比率が高いと、低い人よりも「高食物繊維・高タンパク質食(高FP食)」によるダイエット効果が高いということがわかっています。PB比が高い人で果物と納豆をよく食べている人ほど、BMIが低い傾向にあります。
- アッカーマンシア属の有無を調べます。肥満の人や糖尿病の人ではアッカーマンシア属が減少しており、「痩せ菌」とも呼ばれています。
- エクオール産生菌の有無も調べます。更年期障害の予防・対策や肌のしわ予防・改善に効果があるとされるエクオールを体内で産生できるかがわかります。判定が「あり」の場合、大豆イソフラボンを摂取することでエクオールを体内で産生できる可能性がありますが、「なし」の場合、産生でません。このため、「あり」の方は大豆食品を積極的に摂取するようにし、「なし」の方はサプリメントからエクオールを摂取するのがよいでしょう。
検査レポートのサンプルはこちら
腸内フローラの検査方法
当院では、最先端の検査方法である「Mykinso Pro」を採用しています。微量の便だけあればできる検査ですので比較的容易に実施可能で、大腸内の細菌の状況を確認できます。
1説明
事前に予約のうえ来院していただきます。この検査について説明を行います。
2問診票・同意書への記入
必要な書類に署名していただきます。検査キットをお渡しします。
3採便

検査キットを使用してご自宅で便を採取します。
4検査キットを返送

問診票・同意書・検査キットを検査機関に返送します(キットの中に返送用の封筒があります)。
5検査レポート受領
6週間以内に検査結果レポートが当院に送信されてきます。
再度来院していただき、結果の説明とそれに応じた今後の治療、対策についてお話しします。
腸内フローラ検査を行うメリット
最新の研究によって、潰瘍性大腸炎や大腸がんなどの腸疾患だけでなく、糖尿病、肝臓がん、うつ、アレルギー、認知症、リウマチなども腸内フローラと密接に関係していると報告されています[3]。たとえば、クローン病患者さんの腸内では細菌の多様性が大きく低下していることがわかっています[4]。また、肥満に関わる菌についても調べているため、ダイエットを頑張っているのになかなか痩せられない方も一度受けてみるとよいでしょう。
腸内フローラのベストな状態は個人差があり、ご自身の体調や検査結果を基に、何回かにわたってご自身のデータと比較することで、最適な環境について理解することができます。たとえば、毎年1回受けることで、行っている対策が実際に効いているのかを確認でき、モチベーションのアップにもつながります。
参考元
[3] Cho I, Blaser MJ. The human microbiome: at the interface of health and disease. Nat Rev Genet. 2012 Mar 13;13(4):260-70. doi: 10.1038/nrg3182. PMID: 22411464; PMCID: PMC3418802.
[4] Manichanh C, et al. Reduced diversity of faecal microbiota in Crohn's disease revealed by a metagenomic approach. Gut. 2006;55:205–211.
MyKinso検査の費用
| 検査名 | 料金(税込み) |
|---|---|
|
MyKinso検査 |
初回22,000円 2回目以降16,500円 |
※対象年齢16歳以上
※初診料が必要な医療機関が多いなか、当院では初診料はいただいておりません。
※予約制です。
腸内環境検査比較表
※スマホの方は横にスクロールできます。
| 項目 | ![]() |
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| 【目的別おすすめ度】 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 腹部症状のある方 | ◎ | 〇 | 〇 | × |
| 腸活/予防医療目的 | △ | 〇 | ◎ | 〇 |
| 【検査技術】 | ||||
| 解析法 | qPCR | ショットガンメタゲノム | 16S rRNA | 16S rRNA |
| 参照データ | 欧米人 | 欧米人 | 日本人 | 日本人 |
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| 【腹部症状に関する項目】 | ||||
| 細菌叢バランス | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 |
| 寄生虫 | ◎ | × | × | × |
| 病原菌 | ◎ | 〇 | 〇 | △ |
| ピロリ菌 | ◎ | × | × | × |
| カビ・真菌 | ◎ | 〇 | × | × |
| 炎症マーカー | ◎ | 〇 | × | × |
| 膵酵素 | ◎ | × | × | × |
| 口腔内細菌 | × | × | ◎ | × |
| 胆汁酸 | ◎(オプション) | × | × | × |
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| 【腸活/予防医療】 | ||||
| 各種病気のリスク | △ | △ | ◎ | △ |
| ビタミン生成能 | △ | ◎ | 〇 | × |
| エクオール生成能 | × | × | ◎ | ◎ |
| 食事アドバイス | 直接医師から | 〇 | ◎ | 〇 |
| 市販ヨーグルトの菌株 | × | ◎ | × | × |
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|
| 【その他】 | ||||
| 対象年齢 | 乳児~成人 | 18歳以上 | 全年齢 | 16歳以上 |
| レポートのわかりやすさ | ×(専門家向け) | ◎ | ◎ | ◎ |
| コメント | ・症状がある方向けの代表的な総合便検査。 | ・ショットガンメタゲノム解析法を用いた唯一の検査。 ・ヨーグルトを選ぶ際の参考になる独自のセクションあり。 |
・日本人27,000人分の膨大なデータベースに基づく分析。 ・腸に届いている口腔内細菌がわかる唯一の検査。 ・30以上の病気のリスク。 |
・腸活初心者向け。 |
| サンプルレポート | こちら | こちら | こちら | |
| 検査料(税込み)※ | 110,000円前後 (為替レートによる) |
56,000円 | 66,000円 | 22,000円 |
※検査料には、検査料+初回カウンセリング料(15分)+結果説明料(30分)が含まれています。


腸内環境外来の流れ
- 初回来院
ご要望や目的をお伺いしたうえで検査を選びます。在庫があれば検査キットを当日お渡しします。 - 自宅で採便
説明書に従って採便したら、所定の封筒に入れてポストに投函します。 - 再来院
検査結果をご説明し、食事や生活習慣のアドバイスを行います。ご本人からご要望があれば、プロバイオティクスやファイバーのサプリメントを販売いたします。
当院で腸内環境外来を受けるメリット
腸内環境の検査や治療は全国で少しずつ広がっていますが、当院には次のような強みがあります。
複数の専門外来との連携
当院には「過敏性腸症候群外来」「SIBO外来」「がん治療中の腸内環境外来」があり、腸内環境の異常がどの疾患に関与しているかを包括的に評価できます。腸内環境外来単独ではなく、必要に応じて他の外来とも連携した診療が可能です。
4種類の腸内細菌叢検査を導入
GI-MAP、MyKinso、KIRIN MicroBioMe、SYMGRAMといった多彩な検査から、目的や症状に応じて最適なものを選べます。食生活改善に役立てたい方から、IBSやSIBOなど具体的症状を精査したい方まで幅広く対応可能です。
検査後の丁寧なフィードバック
結果は、消化器外科を専門とする院長が解説し、食事・生活習慣・サプリメント等の提案まで含めたオーダーメイドのプランを提示します。単なる検査結果の説明にとどまらず、実際にどう改善していくかを具体的に示します。
フォローアップ体制の充実
腸内環境の改善は一度で終わるものではありません。当院では再検査や定期的なフォローを通じて、腸内環境を安定させ、持続的な健康維持につなげていきます。
よくあるご質問(FAQ)
検査は痛みがありますか?
採便のみですので、痛みはありません。
健康診断の便潜血検査とは何が違いますか?
便潜血検査は、消化管からの出血の有無を調べる検査であり、腸内細菌は調べません。一方、腸内環境(腸内フローラ)検査は、基本的に腸内に生息している微生物を調べる検査です。
検査だけ受けることはできますか?
はい、可能です。ただし結果を生活改善に活かすため、医師による解説を受けていただくことを推奨しています。なお、カウンセリングや結果説明を受けられなくても、費用は減額されません。
サプリメントは必ず必要ですか?
必ずしも必要ではありません。食事や生活習慣で改善可能なケースもあります。必要に応じてご提案いたします。
検査結果はどのくらいで出ますか?
検査の種類によりますが、概ね2〜6週間程度で結果が判明します。
子どもでも検査できますか?
検査の種類によっては年齢制限があります。上記の「腸内環境検査比較表」をご確認ください。
保険は使えますか?
腸内細菌叢検査に健康保険は適用されないため完全に自費診療です。
検査結果は日本語ですか?
GI-MAPのみ英語です。結果説明時にわかりやすく解説します。
再検査は必要ですか?
基本的に任意です。ただし、腸内環境は生活習慣の影響を強く受けるため、改善後の効果判定や再発予防のために半年〜1年ごとの再検査をおすすめしています。
腸内フローラ改善のために食事で注意すべき点は?
発酵食品、食物繊維、オリゴ糖の摂取が有効とされます。個別の体質や症状に合わせて、医師から具体的にアドバイスします。
腸内環境は、消化器症状だけでなく、免疫、代謝、精神面にまで深く影響する「全身の健康の鍵」です。当院の「腸内環境外来」では、最新の腸内細菌叢検査と個別化プランを通じて、患者一人ひとりに寄り添ったケアを提供します。
すでに設けている「過敏性腸症候群外来」「SIBO外来」「がん治療中の腸内環境外来」と連携しながら、より包括的な医療を目指しています。腸内環境に関心をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。




