生活習慣病
(痛風、高血圧、高脂血症、糖尿病)

生活習慣病とは

生活習慣病とは、痛風、高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリックシンドロームなど、体質や生活習慣が原因となって発症する慢性的な疾患のことを指します。
生活習慣病は自覚症状が乏しいことがほとんどで、進行すると複数の合併症のリスクがあります。特に脳卒中、心臓病、腎臓病といった深刻な疾患の発症リスクが高まりますのでご注意ください。したがって、日々の生活習慣の見直すことを最優先に行っていくことが重要です。

以下についてご本人に伺ったうえで、最適な治療方針をご提案いたします。

  • 食習慣
  • 運動習慣
  • 飲酒・喫煙の習慣
  • ストレスのコントロール
  • 睡眠時間

痛風

高尿酸血症とは、血中の尿酸値が高い状態が慢性化する状態です。発症すると、足の指などで強烈な痛みが生じる痛風発作が起こることで知られています。一方で尿酸値が高くても痛風発作が起こらない方もいらっしゃいます。
高尿酸血症を発症すると、腎機能障害や尿路結石の発症リスクが増加しますので、痛風発作が起こっていなくても治療を受けることをお勧めします。

痛風発作について

血中の尿酸が結晶状に変化して関節に付着し、関節で炎症が起こることで強烈な痛みが生じます。歩くことが難しい程の痛みに襲われますが、大抵は10日程度で痛みは解消します。尿酸値が高くなることが主な発症原因ですが、尿酸値が一気に下がることでも痛風発作が起こることもあります。また、激しいスポーツなどによって起こることもあります。痛風発作が起こらないように病状をしっかり管理していくことが大切です。

尿酸値とプリン体

エネルギーの源となるプリン体は、細胞の核酸を構成する欠かせない成分である一方で、代謝時の老廃物として尿酸を生成します。したがって、プリン体が過剰に代謝されてしまうと、血中の尿酸値が高まり、高尿酸血症の発症に至ります。また、内臓脂肪の増加によって脂肪細胞から大量の遊離脂肪酸が分泌されることで、肝臓が過剰にプリン体を代謝するようになりますので、日々の食習慣や運動習慣が尿酸値に影響を与えています。

高尿酸血症の治療

痛風発作を起こしているときは、関節の炎症を解消して痛みを緩和させる治療を最優先します。痛みが治まってから高尿酸血症の治療を開始します。
病状に応じて、尿酸生成抑制薬や尿酸排泄促進薬を服用していただきます。
また、高尿酸血症の方は尿pH6.0未満の酸性尿となる傾向にあり、腎疾患や尿路結石などのリスクが高まりますので、尿をアルカリ化する薬を服用していただくこともあります。
尿酸値が一気に下がるとかえって痛風発作が起こるおそれがありますので、処方内容は注意深く検討します。尿酸値を下げても結晶はすぐには消えませんので、こまめに検査を受けることで病状を適切に管理しましょう。

生活習慣

肥満を防いで適正体重を維持し、プリン体を過剰に摂取しないように心がけます。無酸素運動など激しい運動はかえって尿酸値の上昇を招きますので、お控えください。運動療法については医師の指導の下で行うことを推奨します。
十分な水分補給を行い尿量が増えると、尿酸を効率的に排出できるようになります。ただし、腎疾患や心疾患を患っている方は、水分摂取量にルールがありますので注意が必要です。

食事

プリン体が豊富に含まれるレバーなどの内臓、カツオ、イワシ、エビ、魚卵、干ししいたけなどはなるべく摂取しないようにしましょう。ビールにもプリン体が豊富に含まれますが、ビール以外のお酒も尿酸値の上昇を招きますので、摂取量はほどほどにしましょう。
コーヒー、乳製品、ビタミンCなどは痛風を抑制することが期待できますが、過剰摂取は禁物です。バランスを意識した食事が重要です。

高血圧

文字通り血圧が高い状態が慢性化します。自覚症状は乏しく、進行すると高血圧によって動脈硬化の進行を招き、心筋梗塞や狭心症などの心疾患、脳卒中などの脳疾患の発症リスクが高まるといわれています。また、肩こり、頭痛、耳鳴りなどの症状がまれに起こりますが、脳疾患や心疾患などの合併症が起こっているサインかもしれませんので、ご注意ください。

高血圧の原因

高血圧のほとんどは本態性高血圧であり、残りは薬の副作用による二次性高血圧です。二次性高血圧は、内分泌疾患、腎疾患、睡眠時無呼吸症候群、大動脈狭窄症などによって引き起こされます。また、ステロイドや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、漢方薬などの薬の副作用で高血圧を発症することもあります。二次性高血圧については、原因疾患の治療や処方内容の見直しによって改善ができるものです。
本態性高血圧は、運動不足、塩分の摂り過ぎ、飲酒喫煙、遺伝的要因、環境要因などが原因です。

高血圧の治療

血圧の計測

ご自宅で定期的に血圧を測定しましょう。高血圧とならないよう適切に管理することで、動脈硬化のリスク低減が期待できます。なるべく毎日、同じ場所・同じ時間に測定することで、些細な異変でも自覚しやすくなります。モチベーション高く生活習慣を改善できるようにするためにも、計測を習慣化することをお勧めします。

生活習慣の改善

肥満解消、塩分を控える、有酸素運動の習慣化、適正体重の維持、禁煙、節酒などが効果的です。また、適度なストレス発散や十分な休息と睡眠を確保することも重要です。なお、無理なく続けていけるように内容を工夫するとよいでしょう。糖尿病、腎疾患、循環器疾患がある方は、糖質の摂取や運動内容に制限を設ける場合がありますので、医師に相談したうえで取り組むようにしましょう。

降圧剤

降圧剤によって、血圧の低下と血管への負荷の軽減が期待できます。高血圧の治療には生活習慣の見直しが絶対に必要ですので、医師の指導の下で適切な内服を行うと同時に生活習慣も正すようにしましょう。
降圧剤の種類はさまざまで、ご本人の生活習慣や病状に応じて最適な処方内容を検討します。

カルシウム拮抗薬

  • 利尿薬
  • β遮断薬
  • アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
  • アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 など
日本高血圧学会による基準に沿った高血圧治療開始時の血圧の基準値
  • 診察室血圧で140/90㎜Hg、家庭血圧で135/85㎜Hg
日本高血圧学会の基準に沿った降圧目標値
  • 75歳未満の大人 130/80㎜Hg未満(家庭血圧125/75㎜Hg未満)
  • 糖尿病を併発している場合 130/80㎜Hg未満(家庭血圧125/75㎜Hg未満)
  • CKD(蛋白尿陽性) 130/80㎜Hg未満(家庭血圧125/75㎜Hg未満)
  • 75歳以上 140/90㎜Hg未満(家庭血圧135/85㎜Hg未満)

高脂血症

脂質異常症とは、血中の脂質が血管内部に付着してドロドロしたプラークとなり、動脈硬化や動脈狭窄の進行を招く疾患です。突如として心筋梗塞や狭心症、脳梗塞といった深刻な疾患を発症するリスクが上昇しますので注意が必要です。
生活習慣病中でも特に脂質異常症は自覚症状に乏しく、健康診断の際に判明することではじめて発症を自覚する方も少なくありません。
血中には、HDL(善玉)コレステロール、LDL(悪玉)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)といった脂質が存在します。中性脂肪や悪玉コレステロールが過剰な高脂血症だけでなく、善玉コレステロールが少ない状態も含めて脂質異常症に該当します。

脂質異常の基準値

  • 低HDL(善玉)コレステロール血症 <40 mg/dl
  • 高LDL(悪玉)コレステロール血症 ≧140mg/dl(120~139 mg/dlは境界域)
  • 高トリグリセライド(中性脂肪)血症 ≧150 mg/dl

脂質異常症の検査と治療

頚動脈エコー

血液を脳に運ぶ頚動脈において、動脈硬化や動脈狭窄が起こっていないかを確認します。首の血管に超音波を当てることで検査するもので、10分程度で検査は終了します。全身の血管の動脈硬化や動脈狭窄を確認することにもつながります。また、心筋梗塞や脳梗塞などの疾患のリスクを把握できるというメリットもあります。

治療

食生活や運動などの生活習慣の見直し、薬物療法が中心となります。血中の脂質は食事内容に大きく左右されますので、食事療法はきわめて重要です。脂質異常症の種類によって食事で注意すべき点もまちまちですので、詳しくは以下をご参照ください。なお、禁煙や適度な運動習慣を身につけることも合わせて行っていきましょう。

高LDLコレステロール血症

悪玉コレステロールが過剰な状態です。卵や肉類などの動物性脂肪の摂取を減らし、食物繊維が豊富に含まれる海藻類やキノコを意識して摂取しましょう。なお、果物には糖質が多く含まれますので、肥満気味の方や糖尿病がある方は摂り過ぎないようにしてください。また、青魚にはDHAやEPAといった不飽和脂肪酸が豊富に含まれますので、積極的に摂取するとよいでしょう。

高トリグリセライド血症

食事から摂ったエネルギーが十分に消費されず、肝臓内で中性脂肪が過剰に蓄積されている状態です。糖質の摂り過ぎや暴飲暴食に注意しましょう。血中の中性脂肪の値が高くなると血管が詰まりやすくなり動脈硬化を引き起こすリスクが高くなります。また、極端な高値は、急性膵炎を発症することもあるため軽視できません。値にもよりますが、まずは食事の見直しや運動不足の解消を図ります。

低HDLコレステロール血症

善玉コレステロールが不足している状態です。ショートニングやマーガリンに含まれるトランス脂肪酸の過剰摂取は厳禁です。
また、アラキドン酸やリノール酸などをなるべく摂取しないように、植物油の摂取も控えるようにしましょう。

脂質異常症の治療薬

病状の種類によって最適な薬はさまざまです。当院では、ご本人の生活習慣に応じて最適な処方を実施します。脂質異常症の治療薬は、肝障害や筋肉痛などの副作用のリスクがありますので、服用中に違和感があればすみやかに当院までご連絡ください。

糖尿病

糖尿病とは、高血糖な状態(血中のブドウ糖が過剰)が慢性化する疾患のことです。脳や全身の筋肉、臓器はブドウ糖をエネルギー源としていますが、高血糖状態が慢性化すると血管に掛かる負荷が大きくなり、脳卒中や心筋梗塞などの原因となる動脈硬化の進行を招くおそれがあります。また、高血糖状態によって毛細血管にも大きな負担がかかりますので、足の壊疽(えそ)や切断、失明、透析治療を要する腎疾患などの重大な合併症のリスクも上昇します。
食事で摂取した糖質は、体内で消化吸収された後にブドウ糖として血中に流れ出します。血中のブドウ糖は、膵臓で分泌されるインスリンによってエネルギー源とされ、肝臓でグリコーゲンに合成されます。インスリンが適切に分泌されることで、血糖値は正常にコントロールされます。
しかし、インスリンの分泌に異常が起こり十分に機能しなくなると、血中にブドウ糖が過剰に残り、高血糖状態となって糖尿病の発症に至ります。

生活習慣病としての糖尿病

糖尿病は、インスリンの分泌が停止する1型、運動不足や肥満といった生活習慣によって引き起こされる2型に分けられます。日本では、成人の糖尿病はほとんどが2型糖尿病です。

糖尿病の治療

完治こそ難しいですが、食事などの生活習慣を見直し、薬物療法も織り交ぜながら血糖値を管理することで状態を安定させ、重大な合併症や動脈硬化の進行リスクを減らすことが可能です。根気強く取り組むことでQOL(生活の質)を維持し、医師の指導の下で患者さんそれぞれの状況に即した最適な方法を検討していくことが重要です。

食事療法

血糖値を下げるために、欠かすことができない栄養素をバランス良く摂取できるように食事内容に注意しましょう。食べ方や食べる順番が血糖値に大きく影響しますので、食習慣を改善することも重要です。また、外食は糖質が多く含まれがちなため、外食ばかりにならないように心がけるようにしましょう。

運動療法

少しの早歩きなどの有酸素運動と筋力トレーニングを複合した運動メニューを継続しましょう。有酸素運動によって筋肉の血流が促進され、血中のブドウ糖を細胞が吸収しやすくなることで、血糖値の低下につながります。また、筋力トレーニングで基礎代謝を上げると、インスリンも機能しやすくなります。
運動メニューは合併症の有無なども考慮したうえで決定する必要がありますので、医師の指導の下で最適な内容を検討していきましょう。

薬物療法

生活習慣病に分類される2型糖尿病では、運動療法や食事療法でも効果が不十分な場合は薬物療法を検討します。血糖値の低下を促す薬を用いますが、膵臓に大きな負担がかかる場合にはインスリン注射も検討します。

CLINIC医院情報

keyboard_arrow_up